https://note.com/happoufusagari
僕の書くものは記事というよりニューヨークでの事業の日誌みたいなものなので本来はnoteというよりブログに書くべきものですが、有料にはしない予定なので緩くお付き合い頂けたら幸いです。
2004年より米国留学、2011年よりニューヨークで店舗経営をしているものです。 コロナを機にブログ再開。
トランプ米統領は中国からの大学院生と研究者の受け入れに国家安全保障上のリスクがあるとして、その一部について一時渡航者としての米国入国を拒否するよう命じた
ビザの発給停止は専門職のH-1B、熟練・非熟練労働者のH-2B、企業の駐在員らのL、交流訪問者のJが対象
米移民税関捜査局(ICE)は6日、米国で学位の取得を目指している外国人留学生について、在籍する大学がオンラインのみの授業に切り替えた場合、米国から出国しなければならなくなると発表した
Perez@ThePerezHiltonThe Apple Store. SoHo. NYC. Sunday night. https://t.co/KfK6rgrLT1
2020/06/01 03:00:40
1. Doordash
13年創業。老舗のGrubhubを抜き去り、現在料理宅配アプリ業界で35%のマーケットシェアを握る全米最大手。SoftbankのVision Fundが18年に出資をし、特にテキサスやサンフランシスコなど西海外、またワシントンDCで圧倒的なシェアを誇る。
コロナ禍による宅配需要の増加により更に多くの方々に知れ渡るブランドとなったDoordash。近々IPOを予定とのこと。資金調達の目的は正直なところはっきりしないが、資金力が付くことは下記ライバル達にとって脅威となることには間違いない。
NYはライバルのGrubhubの牙城であるため、僕のNYの店でもDoordash経由の注文は全体の2割程度ではあるが、コロナ禍に際し手数料を下げてくれるなどレストラン側に対し好意的であり良い印象を持っている飲食店オーナーも多い。
2. Uber Eats
マーケットシェア32%。コロナ禍によりライドシェア事業が壊滅状態であるUberにとって、唯一の希望の光。配達ドライバーの位置情報の正確さなどライドシェアで培ったデータ量・技術力がサービスの随所に遺憾なく発揮されており、僕らレストラン運営側にとって働きやすい存在。
3. Grubhub
アメリカで料理宅配サービスといえばまずここ。04年創業、市場を創り上げてきた功労者。マーケットシェア24%。
13年に同業のSeamlessを買収、
17年にYelpからこれまた同業のEat24を買収、
18年に大学へのデリバリーに特化したサービスであるTapingoを買収、
と着々と地盤を固めているように思えるが、後発の競争相手に押され直近はかなり厳しい決算、昨年はWalmartへの身売り話も噂された。
4. Postmates
フードの宅配においては上記3社に比べ規模は小さく、またメキシコシティを除き米国以外ではサービスを展開していないが、小売店と提携しフード以外の商品も配達をしたり様々なユニークなサービスをローンチし続けるユニコーン。
5. Caviar
登録すればどんなレストランでも掲載され注文を受けられる他社サービスと異なり、同社により厳選されたレストランのみ取り扱うスタンスが受け一時注目の宅配アプリとなったが、19年8月にDoordashによって買収される。しかしDoodashとターゲット層が異なる(大都市のみの展開)ため買収後もブランド、サービス共にそのままの形で存続しており、うちの店舗でも約一割程度のオーダーは同社のアプリからとなっている。
6. Amazon Restaurant
あのAmazonが同デリバリー業界に参入するということで早速登録したが、待てと暮せどオーダーは入らず(平均で月に2-3件程度)。競争に破れ、19年6月に米国市場から撤退。
その他、Allset、Delivery.comなど全て契約して使ってみているが、基本的には各社サービスは全く同じ(契約レストランのメニューを自社サイト・アプリに載せ、注文を取り、配達ドライバーを派遣する)であり、マーケットシェアと同程度の割合で注文が入るという以外の違いはないと言ってよい。
消費者の側にとっても、購入するプロダクツ、すなわちレストランのメニューやその値段は上記どのサービスを使おうが同じに決まっているのだからどれか一つアプリをダウンロードすれば他社のアプリに乗り換える必要性はあまりないと思われる。
近年ビジネスモデルが多少異なる事前予約・Subsription型のMealpal、レストランの売れ残りメニューのタイムセールサービスであるFood for Allなどが登場してきており実際に契約してみてそれなりにお客さんも呼び込むし面白いなとは思っているが、上記1-4ほどの大規模なサービスにはなっていない。
このように各社サービスが似通っていてスイッチングコストが高いという状況下、ライバル社の客を削り取るには、どうしても圧倒的な資金力で自腹キャンペーン(送料無料や$xx offなど)を打つか、それ以上に効果的なのはライバルを買収することで競争自体を無くしてしまうという方法にならざるを得ない。
そこで注目するべきは、やはりSoftbank(のVision Fund)が出資しているDoordashとUber。昨年にSoftbankが主導しこの二社の合併が模索されたのだが、残念ながら破談となっている。
また、昨日Uber EatsがGrubhubに買収を持ちかけたとの仰天ニュースが飛び込んできた。もしこれが実現すると合併後のシェアは55%となり、全米最大手のDoordash(35%シェア)を抜くことになる。
Grubhub shares surge off reports of acquisition offer by Uber
WeWorkで大苦戦を強いられているSoftbankとしては早くDoordashを上場させ投資を回収したいところだろうが、同社は19年度も大幅な赤字であり上場するには時期尚早ではとも言われているし、ここはSprintとT-MobileのようにUber EatsとGrubhubとの件をまとめ、一社でも市場から排除することで競争に必要なコストを無駄に浪費しないようにすることは業界にとって、しいては消費者にとって必要なことかもしれない。(が、そう簡単に承認されるとも思えないが。。)
ちなみに、僕も含めレストランオーナー達は皆口を揃えてこれら料理宅配サービス各社に「お前らのコミッション(15-30%)高過ぎるんだよ!」とデモでも始めようかという勢いだが(実際、訴訟も起きている)、実は彼ら自体も全く儲かっておらず、もともと真っ赤な上にギグワーカーの雇用問題も抱えたり問題山積というのが現実である。次回はこの点についてもう少し書こうかな。
As they rushed to maintain U.S. meat supply, big processors saw plants become covid-19 hot spots, worker illnesses spike
結果、既に米国の牛肉、豚肉生産量の25%が減少している様子で、そろそろ店頭価格へ影響が出るものと思われる。
以下CNNの記事(4月26日付け)だが、Tyson Foods会長の「The food supply chain is breaking(フードサプライチェーンは崩壊しつつある)」というコメント、なかなか刺激的である。
'The food supply chain is breaking' Tyson says as plants close
このような状況を踏まえ、食肉加工工場の運営を継続するよう二日前に大統領令が出されたが、従業員だけでなく世間を納得させるだけの対応策が取られていないのが現状のようである。
Trump orders meat processing plants remain open
僕の店でも最近以前よりさらにビーガンメニューのリクエストが多くなってきたので、いっそ高くても植物性代替肉にシフトする手もあるかもとも思ったが(まだ全然美味しくない)、今回のコロナ禍中ではこの特定の分野だけでなくほぼ全ての業界に影響が出ているためうちのような小規模事業者では手が打ちようがない。
参考:メーカーの代表格であるBeyond Meatの株価はぐっと先週上がっている(といってもコロナ禍以前にはまだ戻っていないが)
デリバリーとテイクアウトだけでなんとか事業を継続している中、ただでさえ料理配達アプリに15-30%も手数料を持っていかれているというのに、これ以上仕入れコストが上がるとかなり厳しくなる。
飲食店はようは加工業者なので、自社で農場を持っているわけでもない一般レストランは素材が無くては商品を作ることができない。仕入れコストはまだお客さんに頭を下げて価格に転嫁することもできるかもしれないが、(これは実際に数週間前に起きたことだが)、仕入先の貿易会社の倉庫が感染者発生のため閉鎖になったら、我々も閉鎖となってしまう。
通常時は特定の企業の休業・廃業などによって構築してきたサプライチェーンが崩れたとしても常に代替先はあるものだが、コロナ禍においては国内、海外どこを見ても広範囲にやられてしまいどうにもならないというのが今回の大きな問題か。
これを国単位で考えた時、食料自給率の問題を常に抱える日本は大丈夫だろうかと心配になってしまう。
ほんの少しずつだが、一旦コロナウイルスの影響で閉じていた周辺のデリなどの店が開き始めてきた。
感染のピークが見え、皆安心してきたのか?
いやいや、ただ単純に、
コロナ<経済的苦境
となっただけだと思う。
僕の情報源は、自社の店舗に料理をピックアップに来る日々何十人と触れ合う配達ドライバー、すなわち低所得者層との会話なのだが、
ドライバー「たとえ(噂になっている法案が通って)自宅の家賃の支払いが”猶予”されても、”免除”ではないのだから結局はいつか払わないといけない。今から働かなかったら将来破産だよ」
僕「(年収が$75,000以下限定だが)中、低所得者層へは大人1人あたり$1,200、さらに子供1人につき$500の現金給付があったでしょ?足りないの?」
ドライバー「家賃、食費、各種ローンの支払いなどでそんなの一ヶ月で無くなるよ。4月はなんとか払えたけど、5月1日はもう目の前、働かないとやばい。」
元々全く貯金が無いアメリカ人。今さら焦り出したか。
先日僕の店に夕食を買いに来てくれた日系スーパーのオーナーもおっしゃっていたが、エッセンシャルビジネスに該当しているのにも関わらず営業していない店舗の悩みの多くは、「店を開けて少しでも稼ぎたいが、従業員がいない」というもの。
僕の店はたまたま働けるスタッフがいたのでメニュー内容をデリバリー専用に変更、キッチンオペレーションをそちらに最適化し毎日開けられているが、それでも多くのバイトの方々が感染の恐怖から自ら仕事を休むことを選んでいて、結果、通常時は週に数時間しか現場に立っていなかった僕が、スタッフに怒鳴られ、時に土下座しながら慣れない作業をこなしている状態だ。
それでも上記の通り働きたい方はどこかに必ずいるのだから、(代替が効くポジション限定だが)新規雇用をしトレーニングを施せばしばらくすればある程度の戦力にはなってくれるのではと何度も採用を検討したが、なにせこの先が見えない世の中、新しい方を雇った後に正規スタッフが戻ってきたら、はい、クビです、とは心情的になかなかできない。甘いだけなのかもしれないが、それくらいならば自分でできる範囲でやるよ、となってしまうのが限られたスタッフと個人的な信頼関係も含め仕事をしている僕のような小規模事業者には多いと思う。
「雇用を継続・産み出せばその給与は保証する」
なんて謳っている政府の救済策も、前回の投稿で書いたように果たして全てのビジネスに行き渡るか分からないので、念頭に入れることさえアホらしい。
死者が20人にも満たないハワイ州でさえ5月末まで外出禁止令は延期となった。桁違いのNYが予定通り5月15日に解除となるとはなかなか現時点では信じ難い。短期・中期と計画を作っている経営者もこう日々めまぐるしく状況が変わると数日先の超短期計画さえ立てられない。計画に沿って日々の勉強を進めようにもどんなスキルも知識も全く役に立たなくなりそうで何をするべきか迷ってしまうくらいだ。(ちなみに僕は、長期計画は「長期計画」と呼ばず、「夢」というふざけた名前を付けているくらい、ほぼない。作ろうとも思わない。)
また、解除になったところで元の状態に戻るまで何ヶ月、いや何年かかるの?というのが誰もが持つ疑問だ。さっさと地方に逃げてしまった、都会に戻らずとも何年でも生活には問題がない富裕層や海外からの旅行者や移住者(これはトランプ政権によってさらにさらに絞られる)がいない限り、たとえ営業を開始しても、
「それはNYではない」
ので、うちも含め”NYであること”をベースに商売をしている多くのビジネスの状況はそれでは何も改善しない。
とは言っても、世界でNYの代替となるようなポテンシャルがある都市もほとんどが苦境であるし、国ベースではこういう時ほどやはり地力に勝る米国に資金が集まってくるだろうということは想像に難しくはない。また石油の価格がこれだけ低ければ、悪さ(笑)をする国も活動が多少緩やかになる(いや、逆に過激になることも時にあるか。。)だろうし、コロナ以前から続いていた米中関係がさらに寸断される=各社予測済みである以上、ある程度は各国冷静に元に戻る方向に進んで行くような気がする。
テロのような局地的なものと違い、ウイルスという可視化できず世界全ての人の心理に共通に影響を与えるという面が最後心配されるが、お金を使ってくれるみんな - 少し天気が良くなると禁止令などそっちのけですぐに外に出てワイワイ騒ぎ出す人達を見るに、うちのような単価が安いサービスは「短期的には」そこまでリスクがあるとは思えない。
それより、自社において最大の苦境となるのは実は今ではなく自粛解除から一年〜二年くらいかもしれない。経営者失格だが、残念ながらこの目まぐるしい変化に何をするべきか全く的確な案が思いつかなく、中期で予想されるリスクに対応できるかが大いに不安。
その自分の不甲斐なさに、よっぽどさっさとビジネスを閉じて日本に帰り山奥にこもって本でも読みながら数年くらい過ごすのが得策なのかもとも頭を過ぎったりしたことも正直一瞬だけあったが、僕は外国人ステータス(E-2ビザ経営者)なので、会社を畳んだ時点でビザは失効しこの国から出ないといけないし、一旦出たら共和党政権が続く限りは同じビザを取得しこの国に戻って来ることは二度とできないだろうから、やはり歯を食いしばってやれるところまでやろうと思う。まぁなんだかんだ言ってなんか毎日忙しすぎて楽しいし。
と書いていたら、政府の救済策の一つ、PPP Loan(中小企業向け給付金プログラムの第二弾)に関しChase Bankから電話がかかってきた。
「過去・現在に政府支給のローンを受けたことがありますか」とのこと。
だからないんだって3度くらい言ったけどね。
明日か明後日には結果が出そうである。
Carl Quintanilla@carlquintanillaA list of public companies that have reported receiving #PPPloan assistance
2020/04/21 07:53:55
(via Morgan Stanley) https://t.co/25Le6RnRqi
早朝から買い出しして、配達して、野菜切って、数分ごとに殺到するオーダーをこなし、時に盗人と喧嘩をし(詳細は近日中にこの場で書きます)、次の日の仕込みをして気づいたら深夜1時という日々が続く。
昨日のクオモNY州知事のアナウンス。5月15日まではこの外出制限の状態を続けるとのこと。
現在のデリバリーのみに制限された業務を365日間何年続けても僕は体力的には特に問題はないが、これは結構時間を食う作業なので、個人的なインプットやブログ執筆の時間を深夜の帰宅後就寝前の2-3時など一時間くらいしか確保できないのが悩み。
まず固定費を稼いでいかないといけないし、有り難いことにスタッフはやたらと元気なので店舗運営は続けていけるのだが、僕の個人的な我儘で多少時間を作りたくなったので、週に少しずつ半日休みを作って開店時間を減らしたり、デリバリー注文を取るオンラインサービス(Grubhub, Uber Eats, Postmatesなど)を特定の時間にいくつか選んで閉じたりして、多少だが椅子に座ってPCを触る時間を増やすことにした。
と、こうして作ったせっかくの時間なので勉強(かポケモンgo)に充てないといけないのだが、やはりコロナの現状がまず真っ先に気になってしまう。。
色々とざっと見ていて、これがまぁまとまっているか。
Science誌に掲載されているハーバード大学の公衆衛生学部、Chan Schoolによる4月14日付の論文。
Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period
これからの新型コロナウイルスSARS-CoV-2の対応策について、過去に人類が体験した類似のコロナウイルスから得られた知見を通じて簡潔に書かれている。
大半は既出の内容であり、確認になるだけなのだが、
・しっかりとソーシャルディスタンスを取って、感染者を可能な限り増やさないようにし(ゼロにするという意味ではない)
・限りある医療機関の人的・物的リソースを使い果たさないよう、重篤患者の数をコントロールし、
・少しずつ集団免疫を作っていく&ワクチンが出るまでの時間稼ぎをする
ということ。
免疫の話題だけでもSARS-CoV-2の免疫が維持される期間は二年?それ以下?類似コロナウイルスとのCross-immunityはあるの?などなど論点は多くありどの点も気になってしまうのだが、同論文も認めているようにまだまだ同ウイルスに関するデータは圧倒的に足りなく、すぐに議論は詰まってしまう。ただ、これを読んで感じるに、インフルエンザのように冬に感染者が増え夏に多少は減る(死滅するというわけではない)という傾向は(確定では全くないが)どうやら見えそうな雰囲気はあるので、数年間はもしかしたら冬に緩いロックダウンをして夏に解除したりというようなことを定期的に続けていくのかなという覚悟はした上で、(今日の)人生設計はしなくてはならないなぁという結論。
「ほらお前、今そんな途中経過を読んでもしょうがないだろ、時間の無駄」
「そんな暇があるならポケモン一匹でも多く捕まえろよ」
とか言われそうだが、まぁ気になったんだからしょうがないだろ。
ちなみに、これも皆さんにとって当然かもしれないが、、、血清検査は今後の対策を練るために重要な項目の一つとして書かれている。この点に関しては欧米、特にアメリカは感染者・重篤者が多い、かつ様々な人種が住んでいる国なので多種多様なデータが日々蓄えられていっているのではと思ってはいる。中国のチームも欧米に派遣されている?とのことだが、今やそれより米国内の研究機関の方がより正確なのではないだろうか。
また、僕だけでなく多くの日本人の関心事は、
「これは所詮、欧米のケースで、日本は違うだろ」
という点かと思うが、こちらに関しても同論文では地域要因に関してもまだはっきり分からないと書かれている。
「日本は欧米とは”何かが”違う」という中で、その”何かが”が一体何なのか、それは社会的な規範から来るものなのか、元々日本人がDNAとして持っているフィジカルのものなのか、ここら辺に関して書かれている論文が出てきたら(やはり日本の研究機関から出てくるのか?)すぐに読んでみたい。
まぁデータが少なくて困るくらい、感染者が少ないまま完全収束してくれると本当は良いのだが。。
朝7時半、レストランの仕入れのため郊外にある大型市場に向かうが、道中全く人影が見当たらない。
外出禁止令下とはいえ、大概いつも数人くらいはフラフラしている人がいるものなのだが、おかしいな。。
市場に到着し8時の開場を待っていると、一台の車が僕に近づいてきた。
「あんた何してんの?今日はイースターだから市場はお休みよ」
しまった。すっかり忘れていた。。
コロナ禍中で日々あまりに街中に変化がない上、ただ毎日生き残るために目の前のビジネスに必死、なによりクリスチャンどころか人型の友人は指で数えるくらいしかいない僕がそんな皆の祝い事に気づくわけもなかった。いや、宗教的にこの国の多くの方にとってとても大事な日です。失礼を致しました。
常に買いそびれている業務用片栗粉はまたも次回にお預けとなったが、結果として予定より早く自社店舗に着けたため前倒しで開店、国民の休日とはいえやはり皆さん自宅隔離をしていらっしゃるのか今日も多くのデリバリーオーダーが入り大忙し。
イースターなだけに卵トッピングが多くなるんじゃないかと予想し急遽50セント値上げしてみたがやっぱりそんなことは全然なく、自分は相変わらずそこら辺のセンスはないなぁと思いつつも、今日も自慢のスクーター運転技術は冴え渡り、閑散とした街中をラーメン片手にアクセル全開、気づくと閉店時間の22時。いやー今日もヘトヘト。
実は連日の肉体労働で肩と腰が結構痛むのだが、そんな時は我が家に古くから伝わる仙豆、はるばるNYまで持ってきたアリナミンEXとキューピーコーワゴールドを数粒ずつ摂取すれば瞬く間に完治すると分かっているので、今日はもう少し無理をしてみようと思う。
ということでここからもう一仕事、結果次の日の朝10時までほぼ徹夜で突っ走ることになる。
Queens Borough President (Queens区の区長)が旗振り役となってスタートしたプロジェクト「Fuel The Frontlines」。
NYCの中でも最も感染者が多いQueens区の病院、まさに「Frontline = 最前線」で食事をゆっくり摂る時間さえない、コロナウイルスと日々戦い続ける医療従事者へ「Fuel = 燃料給油」、ようするに食糧を配給しようという企画である。
通常営業が禁止となりデリバリーとテイクアウトのみに限定され収益機会が限られる中、営業を続けている飲食店へのサポートという目的もあり、主にQueens区の飲食店が提供元となっているのだが、この度、僕の企業もその一社に選ばれることになった。
数日前に担当者から連絡が来て、急遽来週の月曜日に130人分の食事を用意してくれないか、とのこと。光栄なことなので喜んでと言いたいところだったが、実は下記の条件を全て満たすことができそうもなかったので一度はお断りをした。
1) 区が主導しているとはいえ同プロジェクトの財源は一般人・企業の寄付によるものであり、一食当たり$6-$8に抑えて欲しいとのこと。
2) グルテンフリーメニューであること。
3) 病院まで配達に行けること。
特に1)が問題で、ほとんどのバイトの方達がコロナ禍中で出社を控えている中、僕ともう一人のスタッフだけで130人分の食事を連日の12時間を超える通常営業後に作ることは体力的に無謀である。何より、一食最大でも$8では人件費や材料費を含め大人が満足できる内容のメニューを利益を出しながら提供できる店はほぼないのではないだろうか。本当は協力をしたくともただでさえ毎日ギリギリの状態で生き残るため必死に営業を続けている中、ボランティアをしている余裕など全くないというのが現状である。
だが、スタッフに上記の理由を告げ、
「断ったよ」
と伝えたところ、思いがけない一言が返ってきた。
「池澤さん本当はやりたいんでしょ。私がグルテンフリーメニュー考えるので、やりましょうよ」
9年前にこのQueens区で創業した時から「僕のような外国人が興したビジネスを受け入れてくれたこの街に根付くため可能な限りコミュニティに貢献していきたい」と常々語り、時に本業とは全く関係ないが街の植林を手伝いに行ったり、地元出身アーティストの展覧会を自社店舗で何度も開いたり、そしてその結果市から表彰されたこともある、、、そういう僕の経営理念を何千回も聞かされているこの最古参スタッフには、本当の想いを隠し通すことはできなかったようだ。
顔にすぐに考えが出てしまうのが僕のダメなところだが、それを汲み取ってくれたことに感謝し、またそこまで部下に言わせたならば、
「でも、、、」
なんて、もう上司として決して言ってはいけない。よしやろう、ということで主催者に即座に参加表明をし動き出すことに。
3)に関しては、僕らが担当することになった先がElmhurst, Far Rockawayという地域にあるコロナ患者達が日々搬入されている病院に隣接するEMS Stationで勤務している消防士や看護師向けの食事ということで、かなり自店舗とは距離があり困ったのだが、いくらコストがかかろうが構わないのでまずはUberで近くまで行き、(ただしUberの運転手を感染させては申し訳ないので)残りの数百メートルくらいは僕が荷車押しながら歩いて届けてやればいいやくらいに思っていたのだが、土壇場で運営側ががっちり感染予防した専門配達人を手配してくれることになった。やはりせっかくの作り立ての食事を僕がトロトロ人力で運んでいるうちに冷たくなったらいけないので、正直助かった。
その後、朝4時まで作業をし続け、20時間を超える連続労働でちょっと疲れが見えてきたので一度お互い自宅に戻り休憩を取ることに。僕は店舗に泊まっても別に構わないのだが、自分の中で毎日家に数分でも帰るよう近年は義務付けているので、大雨だがスクーターを飛ばして帰宅。そしてまた朝7時に店舗に再集合、10時15分、配達員の方が到着したちょうどギリギリに全て梱包まで完成、ご迷惑をお掛けすることなくお渡しすることができた。
皆さん、どうかそのおにぎりで元気になってウイルス達に打ち勝ってくれ、そう想いながら帰途につき、仙豆を飲み込み爆睡。創業時はこれくらいのこと屁でも無かったが、さすがにもう歳には勝てない。おめめがどうやっても開きません。
と、今日は勝手に臨時休業させてもらいました。言い訳は「イースター休暇」。クリスチャンでもないのに。
リピーターの方々、どうかお許しください。。
ちなみに同プロジェクトでは広く募金を集めているので興味がある方は是非。
参考までに、中間に入って運営してくれている方々はボランティアでやられていらっしゃるそうです。
Fuel The Frontlines
https://www.queensbp.org/fuel-the-frontlines/
いつもは大渋滞の各通りは全てガラガラなので、ど真ん中をスクーターのアクセルを全開にして走る。街のゴミもかなり減ったし、何度も過去の投稿でも言っているように空気が随分ときれいになった気がする。多くの店舗は閉鎖しており、出歩いている人もほとんどいない。唯一人がいるのがスーパー。各店、店舗内の人数調整のため入場制限をしており、店の前に長蛇の列が見られる。
よく「NYの治安は大丈夫?」と聞かれるのだが、現在の所、コロナ騒動以前と比べ僕の周囲では大きく変わったということはない。ただもちろんあまり良いとは言えなそうだが。
アミーゴさん、中国人の方々が料理配達の際に乗っていらっしゃる電動自転車と違い、速度は多少遅いのだが代わりにデッキ(足場・立つところ)があるのでそこに荷物を載せることができ、毎日食だけでなく色々なものを街中運んでいる僕にとって必須、いやこれがなかったら僕の生産性は50%は落ちるので正直ビジネスが成り立たないと言っても過言ではない。
街中で警察官に「おーそれどこで買ったのか、かっこいいねー」と何度も話しかけられるくらいなのだが、実は意外なことに未だ公道での利用は正式には許可されてはいないとのこと。よって日本ではほとんど見られないこの電気スクーターについてヘビーユーザーの視点から話したいことは山程あるのだがグチャグチャ言う人が出てくるとめんどくさいのでこの場では今は書かないことにしておく。
個人的に相談には乗るので興味がある人はご連絡ください。
それにしても、ここ三週間くらい配達をしていて感じるのだが、家から出てくる人たちがどんどんやつれていっている気がする。今日も、薄暗い部屋の中からボサボサの髪の女性がヨロヨロと寝間着姿で出てきて、(まぁ飛沫感染したくない気持ちは分かるが)目も合わさず無言でお金を差し出しさっとラーメンを掴み取っていく姿を見ると、
普段だと、
「まぁ俺はこの国で男性としての魅力ゼロの虫けらだからそりゃそういう対応になるよね」
と思って納得できるのだが、今の状況下では、
「きっともう何週間も人と会っていなくて見た目とか気にしなくなっちゃったのかな」
「もう夕方なのに毎日やることなくて寝ているだけなのかな」
と思ってしまうよね。
一刻も早くこの状況が収束することを願うばかりである。