八方ふさがり

2004年より米国留学、2011年よりニューヨークで店舗経営をしているものです。 コロナを機にブログ再開。

05年より500回ほど投稿していたLivedoor blogからこの度noteに引っ越しました。

https://note.com/happoufusagari

僕の書くものは記事というよりニューヨークでの事業の日誌みたいなものなので本来はnoteというよりブログに書くべきものですが、有料にはしない予定なので緩くお付き合い頂けたら幸いです。


ここ数ヶ月の米国政府の移民対策について各所よりコメントを求められたので、ちょっとだけ書こうと思う。

まず直近の流れ。早い。

トランプ政権はコロナ禍の混乱に乗じてか、今までやりたかったことを着々と実現している様子。


まず5月30日には、

トランプ米大統領、一部中国人留学生の入国拒否命じるー安保上の懸念(bloomberg.co.jp)
トランプ米統領は中国からの大学院生と研究者の受け入れに国家安全保障上のリスクがあるとして、その一部について一時渡航者としての米国入国を拒否するよう命じた

頻繁に僕の経営するレストランで食事のデリバリー注文をしてくれていた中国人の方と4月の半ばにこんなやり取りをし、とても残念だったのでついスタッフに話をしたのを覚えている。

彼「今日のオーダーが最後なんだ。今までありがとうね」

僕「えーどうしたのー?」

彼「大学での研究もまだ途中なんだけど、もう中国に帰ろうと思ってさ。この国(アメリカ)嫌いになってさ。ははは。居づらくて。」

彼は見た目の年齢から35-40歳、おそらく博士課程の研究者であろう。今から思えば、4月の時点で既にこのような事態になると大学機関には噂が流れていたのかもしれない。


そして6月22日には、

就労ビザ発給、年内停止へ 自国民の雇用優先 米政府 (asahi.com)
ビザの発給停止は専門職のH-1B、熟練・非熟練労働者のH-2B、企業の駐在員らのL、交流訪問者のJが対象

これも相当驚かされたニュース。僕が持つE-2(投資)ビザは幸いなことに該当していないが、こんな調子ではこの先どうなるか分かったものではない。正直今の不安定な時期に新たな雇用を生む余裕は自社にはないのだが、次に来そうなのは「アメリカ人をxx名雇っていない企業の経営者のビザは取り上げます」とか言われたらどうしようかと恐ろしくてしょうがない。

特殊技能を持つ外国人を雇えるようにするためにこのようなビザが存在しているわけで、たとえ彼らをこの国から追放しても、その空いたポジションに見合う技能を持っていないアメリカ人を採用するわけがないのだが。。


そして、7月6日にはついに一般の学生にまで影響が及ぶ事態に。

米大学の留学生、オンラインのみの授業に移行なら出国迫られる可能性(CNN.co.jp)
米移民税関捜査局(ICE)は6日、米国で学位の取得を目指している外国人留学生について、在籍する大学がオンラインのみの授業に切り替えた場合、米国から出国しなければならなくなると発表した

僕の周辺には学生さんや教育期間で働く方も多いので、ここ数日のSNSのタイムラインはこの話題で持ち切り。

「アメリカの多様性が失われる」
「選挙対策のためにトランプはここまでするのか」
「大学は留学生の学費(アメリカ人と比べて約2.5〜3倍)で成り立っているのにどうすればいいというのだ」

などなど、非難轟々。

狙いは母体数が大きい中国からの学生を排除したいのかなとは推測が付くが、「これでは他国からの留学生もいられなくなってしまう、なんとしても阻止しなければ!」という論調が目に付く。

もちろんその全てに理解はできるし米中間の関係は今後も(少なくとも11月までは)どうみても悪化の一途をたどるであろうから否定はしづらいのだが、

異なる見方として、(いくら疫病の蔓延という背景があるとしても)全ての授業をオンラインに移行するということ自体がまず大いに偏っているとは思えないだろうか。

特にCNNの記事にあるようにハーバードのようなトップ校が先導すると他の教育機関が追随するのは間違いがなく、長期的に見て様々な弊害が生まれる可能性がある。

例えば、毎日自宅に籠もり勉強をすることによる学生の健康上の問題。学校に行くという行為はそれ自体が運動であり、友人と対面で会話をすることで人間らしいコミュニケーションが生まれる。カフェや公園などに自宅外にPCを持ち込んで受講する人ももちろんいるだろうが、通信環境を考慮に入れるとやはりほとんどの方は朝から晩まで家で授業を受けざるを得ない。毎日室内で必死に勉強を続け、卒業までの4年間、部屋を出たのは数日でしたなんてとても笑えない。

経済にとっても大きな損失になる。学生の移動が無くなることにより、大学のカフェテリアは当然のこと、大学周辺の様々なビジネスは壊滅、存在する意味もなくなるので不動産の価格は下落する。
電車やバスなどの公共機関も成り立たなくなる。NYの地下鉄を運営するMTAはコロナ禍中の乗車率の低下により、赤字幅が拡大。リモートワーク、学校閉鎖が続く中このままでは破綻してもおかしくない。

何より、5Gが広がりきった世の中ならば違うのかもしれないが、今の技術では残念ながら多くの点で対面授業を超える質のものをオンラインで提供できるとはなかなか思えない。

というより、大学に行く意味、大学が提供する価値ってなんだろうかとこれを機に考えるのは良いことかもしれない。

10年前の個人的な話で恐縮だが、僕は大学院に通い始めて半年経ったくらいの頃から考えがぐっと変わって、

「大学は勉強をするところというより、教授や学友とコミュニケーションを取るところだな」

と思うようになった。

初めの半年は日々出される大量の課題に忙殺され、授業が終わった後もただひたすらに一人で勉強をし続けたのだが、あまり成績は良くなく、こんなに頑張ったのに、、、と大いに凹んだことがあった。

しかしそれは単純に周囲とのコミュニケーションが足りなかったせいだとふと気づき、そこからクラスメートと勉強チームを組んでは時に一緒に遊びに行ったりビジネスプラン披露大会をしたり、質問もないのにお気に入りの教授の部屋に押しかけて雑談をするようになり、、、その結果、成績も急激に伸びたのだが、何より知識を記憶するということ以上に「学ぶ」ということがどういうことなのかを大いに知ることができ、その経験がそのまま今の仕事に繋がっている。

いや、何もオンラインがダメだと言っているわけではない。

個人的にはプログラミングからPhotoshopなどのソフトウェアの使い方、店舗の棚を自作するためのDIYに至るまでオンラインで学んでいるし、自社事業では5年前くらいには既にオフィスを解約しほとんどのスタッフにはSlackなどを利用しリモートで働いてもらっているくらいなので、オンラインの何が優れていて何が足りないかは多少なりとも分かっているつもりだ。

ICEの決定に関しては、ようは急激な変化に社会が付いていけないだろうから今はひとまずオフラインとのハイブリッドにしておき(そうすれば留学生は在籍できますよ)、その間にオンライン教育の質の向上と既存のオフライン教育の見直しを行っていき、最適なバランスを見つけていきなさいな、というお達しだと僕は捉えている。

と、論点をずらしてはみたんだが、、まぁ、中国人排斥という流れが政府だけでなく一般人にまで浸透し始めてくると(特に中華系の人口が多いNYは)あまりに危険、さらにアジア人の区別が付かない大半のアメリカ人によって自分も巻き添えをくらうのは勘弁なのでそう考えたいだけなのかもしれない。。


最後に余談。

ここ数ヶ月は自社レストランのフロントで毎日働いているのだが、

「あなたチャイニーズ?」

と今月だけで既に3回も客に言われた。いつも”典型的な日本人の外見だね”って言われてきた僕がだ。

「日本人なんだけど」

と応えると、

「おお、そうか、そうか」

と急に笑顔になり、そのあと決まったように永遠と中国人の悪口を言ってくるという。

別に反論も同意もしないけどさ。まぁ僕が気づいていないだけか分からんがここにいるほとんどの中国系の方々は善良な市民ですから。そんなことより、せっかく作った飯が冷めるからとっとと持っていけよ。

国内は白対黒が再燃してしまったが、政府は支持率向上のため国外に目を向けさせたいはずなので、そうなるとターゲットは明白か。。

こういう人達が増えるのも当然なのかもしれない。

もう人種問題、懲り懲り。


ミネアポリスから始まったジョージ・フロイド氏の一件でNYCも連日荒れている。

デモも(本来の目的である)人種差別に対する抗議目的の方々と、特定組織による建物、警察車両への放火、店舗への破壊・略奪行為を行う輩の二手に分かれており、そこにここ数ヶ月自宅待機を余儀なくされ鬱憤が溜まった民衆が参加し規模が膨れ上がっている様子。

デモ隊と警官隊が衝突したユニオンスクエアの周辺でスーパーを営むオーナーが、数時間前に僕の店まで夜食を買いにきてくれ少し話をしたのだが、

「同地域の店舗の中でも、特に狙われているのはそれなりの値段がするもの・転売ができるものを扱うところなので、そういうビジネスは板を外壁に貼るなどこれ以上被害が拡大しないよう対応をしている」

とのこと。

シャネル、ロレックスなどはもちろんのこと、アップルなども格好の的となってしまった。もはやここにおいては人種差別問題など全く関係ない。治安悪化を望んでいる集団がいるとしか思えない。

ただでさえコロナ禍で苦しい経営状態であるリテールビジネスに対し追い打ちとなることは間違いない。

現在の所、既に数百人を超える逮捕者が出ている。マンハッタンにあるうちの第二店舗の周辺も結構破壊されているようで、今日も同地域でデモの行列が見られたとの報告があった。





実は先月、同店舗の前にホームレスの一団が突如現れ、空き缶回収ビジネス(街中の空き缶を拾ってきてお金に変える)のベースキャンプを作ってしまい地域住民や警察を巻き込みながらなんとか先週追い出したところ。一難去ったらまた一難。

NYCで店舗を維持するコストの高さといったら、、、もう涙が出る。

幸運にも?ホームレス対策にちょうどバリケードを張り巡らしたので、今後暴徒化した人々があえてそれを破壊してまで店舗に侵入する理由もあまりないとは思うのだが、うーん、やっぱり何かされると後片付けが面倒なので勘弁願いたいところ。

以前大いに落書きされた店舗のシャッターも塗り直したばかりだから、頼むからもう下手くそな絵は描かないで欲しい。歌舞伎役者とか描いてくれるならばいいんだが、まぁそんなことは無いわけで。

やはり第二店舗の様子が心配なので今晩行こうかどうかかなり迷ったが、本日23時から明日朝5時までは瓦礫の撤収などの作業を行うので外出禁止との通達が市からきてしまい、第一店舗での営業を22時に終えてから向かったとしても途中で逮捕されるかもなのでやめることにした。

それにしても、、今回の事件は人種問題を越えたところにあることは明白である。差別に対する抗議活動ならばある程度の期間で落ち着くことが予測されるが、もし一部の報道の通り、破壊活動を先導する組織の目的がただ社会を混乱に陥れるということではなく政治的なものであるならば、これは米国が分断、また大国同士が対立したことによる結果なのだから、少なくとも大統領選挙まではこの週末に起こったようなことが断続的に起きるということであろうか。

コロナ禍はこれから世界に起きる大きな変化のきっかけに過ぎなかったのかもしれない。

こんな状況下でどうやってここNYCでビジネスを継続していけばいいのか。。悩む日々が続きそうである。


4月末くらいからようやくポツポツと飲食店が開き始めた。理由として以下の点が挙げられるだろうか。

1. 政府の助成金であるPPP(Paycheck Protection Plan)が多くの
小規模事業者に行き渡った。
2. 感染者数がピークに達しそろそろ外に出ようという人が増えてきた。
3. 5月の家賃が払えないと焦り始めた人達が仕事に戻ってきた。

これからも日々多くのレストランが営業を再開していく様子だが、地方に逃げた人や旅行者がすぐに戻ってくるわけではないので注文総数は大して変わらないはずであり、結果各店舗の売上は落ちていくものと思われる。僕の店
の注文数もテイクアウトは増加傾向にあるが、デリバリーは最盛期のざっと20-30%の減少となっている。

本日はそのデリバリーにおいてお世話になっている料理宅配アプリについて書いてみようと思う。

レストランへ直接注文があった場合は近辺ならば僕がスクーターで配達をしているのだが、それ以外の大半のオーダーは日本でもお馴染みの
Uber Eatsなど専用配達ドライバーを派遣してくれるサービスを通して受けている。

僕は自社のレストラン事業を単なる収益機会としてだけでなく客の滞在時間を増やし他のサービス(クラス、展示、イベントなど)へ繋げていくという目的があり運営しているのだが、実はそれ以上に、自ら運営することで飲食業界の知見を得、それをコンサル事業に活かすことが何よりも重要であるので、このような関連サービスは大体ひとまず参加してみることにしている。

ということでまずはNYで提供されている料理宅配サービスについて簡単な
紹介を行っていく。ちなみに全て自社で契約した先である。(マーケットシェアの数値はSan Francisco Business Timesより拝借)


1. Doordash
13年創業。老舗のGrubhubを抜き去り、現在料理宅配アプリ業界で35%のマーケットシェアを握る全米最大手。SoftbankのVision Fundが18年に出資をし、特にテキサスやサンフランシスコなど西海外、またワシントンDCで圧倒的なシェアを誇る。


コロナ禍による宅配需要の増加により更に多くの方々に知れ渡るブランドとなったDoordash。近々IPOを予定とのこと。資金調達の目的は正直なところはっきりしないが、資金力が付くことは下記ライバル達にとって脅威となることには間違いない。

NYはライバルのGrubhubの牙城であるため、僕のNYの店でもDoordash経由の注文は全体の2割程度ではあるが、コロナ禍に際し手数料を下げてくれるなどレストラン側に対し好意的であり良い印象を持っている飲食店オーナーも多い。

2. Uber Eats
マーケットシェア32%。コロナ禍によりライドシェア事業が壊滅状態であるUberにとって、唯一の希望の光。配達ドライバーの位置情報の正確さなどライドシェアで培ったデータ量・技術力がサービスの随所に遺憾なく発揮されており、僕らレストラン運営側にとって働きやすい存在。


3. Grubhub
アメリカで料理宅配サービスといえばまずここ。04年創業、市場を創り上げてきた功労者。マーケットシェア24%。

13年に同業のSeamlessを買収、
17年にYelpからこれまた同業のEat24を買収、
18年に大学へのデリバリーに特化したサービスであるTapingoを買収、

と着々と地盤を固めているように思えるが、後発の競争相手に押され直近はかなり厳しい決算、昨年はWalmartへの身売り話も噂された。

4. Postmates
フードの宅配においては上記3社に比べ規模は小さく、またメキシコシティを除き米国以外ではサービスを展開していないが、小売店と提携しフード以外の商品も配達をしたり様々なユニークなサービスをローンチし続けるユニコーン。


5. Caviar
登録すればどんなレストランでも掲載され注文を受けられる他社サービスと異なり、同社により厳選されたレストランのみ取り扱うスタンスが受け一時注目の宅配アプリとなったが、19年8月にDoordashによって買収される。しかしDoodashとターゲット層が異なる(大都市のみの展開)ため買収後もブランド、サービス共にそのままの形で存続しており、うちの店舗でも約一割程度のオーダーは同社のアプリからとなっている。


6. Amazon Restaurant 
あのAmazonが同デリバリー業界に参入するということで早速登録したが、待てと暮せどオーダーは入らず(平均で月に2-3件程度)。競争に破れ、19年6月に米国市場から撤退。

その他、AllsetDelivery.comなど全て契約して使ってみているが、基本的には各社サービスは全く同じ(契約レストランのメニューを自社サイト・アプリに載せ、注文を取り、配達ドライバーを派遣する)であり、マーケットシェアと同程度の割合で注文が入るという以外の違いはないと言ってよい。

消費者の側にとっても、購入するプロダクツ、すなわちレストランのメニューやその値段は上記どのサービスを使おうが同じに決まっているのだからどれか一つアプリをダウンロードすれば他社のアプリに乗り換える必要性はあまりないと思われる。

近年ビジネスモデルが多少異なる事前予約・Subsription型のMealpal、レストランの売れ残りメニューのタイムセールサービスであるFood for Allなどが登場してきており実際に契約してみてそれなりにお客さんも呼び込むし面白いなとは思っているが、上記1-4ほどの大規模なサービスにはなっていない。

このように各社サービスが似通っていてスイッチングコストが高いという状況下、ライバル社の客を削り取るには、どうしても圧倒的な資金力で自腹キャンペーン(送料無料や$xx offなど)を打つか、それ以上に効果的なのはライバルを買収することで競争自体を無くしてしまうという方法にならざるを得ない。


そこで注目するべきは、やはりSoftbank(のVision Fund)が出資しているDoordashとUber。昨年にSoftbankが主導しこの二社の合併が模索されたのだが、残念ながら破談となっている。

また、昨日Uber EatsがGrubhubに買収を持ちかけたとの仰天ニュースが飛び込んできた。もしこれが実現すると合併後のシェアは55%となり、全米最大手のDoordash(35%シェア)を抜くことになる。


Grubhub shares surge off reports of acquisition offer by Uber

WeWorkで大苦戦を強いられているSoftbankとしては早くDoordashを上場させ投資を回収したいところだろうが、同社は19年度も大幅な赤字であり上場するには時期尚早ではとも言われているし、ここはSprintとT-MobileのようにUber EatsとGrubhubとの件をまとめ、一社でも市場から排除することで競争に必要なコストを無駄に浪費しないようにすることは業界にとって、しいては消費者にとって必要なことかもしれない。(が、そう簡単に承認されるとも思えないが。。)

ちなみに、僕も含めレストランオーナー達は皆口を揃えてこれら料理宅配サービス各社に「お前らのコミッション(15-30%)高過ぎるんだよ!」とデモでも始めようかという勢いだが(実際、訴訟も起きている)、実は彼ら自体も全く儲かっておらず、もともと真っ赤な上にギグワーカーの雇用問題も抱えたり問題山積というのが現実である。次回はこの点についてもう少し書こうかな。


ここ最近自社レストランの仕入れのためほぼ毎日行くようになったNY市内にある業者用食品市場だが、ソーシャルディスタンスを守るということで入場制限が課せられている。
IMG_5274

午前6時のオープン時に行くとこんな感じ。45分待ち。太極拳をしているおじさんやスマホでセクシー画像を見ているお兄さんなど思い思いに待ち時間を過ごしている。ちなみに先週昼14時に行ったときは2時間待ちだった。

PCやスマホがあれば待つことには正直何の苦もないとはいえ、行く度にこんなに待たされたらその後の予定もなかなか立てられず困るなぁ。。

この入場規制は一度に市場内に滞在する人数を減らし可能な限り感染リスクを減らしたいということなのだと思うが、列に並んでいる時点で6フィートの距離を空けている人など誰もいない。なにより日々不特定多数の方々と触れ合う飲食関係者の陽性である確率は非常に高いものだと推測できる。といって検査で陽性なんて出た日には店を閉じないといけない→目の前の$1を稼がないと経済死が待っている僕らがそんなことできるはずもない(いや、しなきゃダメだけど、でも、という話)。

ちなみに外出禁止の発令当時は一般消費者が行く街中のスーパーでは小麦や卵が品切れになっていたし値段も高騰していたが、業者が集まるこのような市場ではその傾向は特に際立って見られず、現在においても全ての食材において十分な量が確保されている。ただそんな状況など一瞬で吹っ飛ぶものなので決して安心はできない。なぜならこれら大規模市場や農場など生産地が何らかの理由で閉鎖となる可能性も大いにあるからだ。

以下のEaterの記事(4月14日付け)によると、工場で働く労働者や商品を街まで運ぶ配送業者がコロナ禍により少なくなっているため、せっかく作った肉や卵、牛乳など生鮮食品を廃棄しているという。

There May Be More Coronavirus Food Shorages Around the Corner 

また、以下Washington Postの記事(4月25日付け)では、食肉加工大手であるTyson Foods, JBS USA and Smithfield Foodsを始めとする31箇所の工場(添付地図参照)で感染者が出ており、既に15箇所の工場を閉鎖しているとのこと。各社従業員に適切なcovid-19への対応策を提供していなかったとして非難の的となっており、相応の努力はしているようだが従業員の立ち位置、生産ラインの変更など一朝一夕にできるわけがなく、再開の目処は立っていない。

As they rushed to maintain U.S. meat supply, big processors saw plants become covid-19 hot spots, worker illnesses spike


結果、既に米国の牛肉、豚肉生産量の25%が減少している様子で、そろそろ店頭価格へ影響が出るものと思われる。

Screen Shot 2020-04-30 at 10.17.02 AM





以下CNNの記事(4月26日付け)だが、Tyson Foods会長の「The food supply chain is breaking(フードサプライチェーンは崩壊しつつある)」というコメント、なかなか刺激的である。

'The food supply chain is breaking' Tyson says as plants close


このような状況を踏まえ、食肉加工工場の運営を継続するよう二日前に大統領令が出されたが、従業員だけでなく世間を納得させるだけの対応策が取られていないのが現状のようである。


Trump orders meat processing plants remain open

僕の店でも最近以前よりさらにビーガンメニューのリクエストが多くなってきたので、いっそ高くても植物性代替肉にシフトする手もあるかもとも思ったが(まだ全然美味しくない)、今回のコロナ禍中ではこの特定の分野だけでなくほぼ全ての業界に影響が出ているためうちのような小規模事業者では手が打ちようがない。

参考:メーカーの代表格であるBeyond Meatの株価はぐっと先週上がっている(といってもコロナ禍以前にはまだ戻っていないが)

Screen Shot 2020-04-30 at 12.25.47 PM
















デリバリーとテイクアウトだけでなんとか事業を継続している中、ただでさえ料理配達アプリに15-30%も手数料を持っていかれているというのに、これ以上仕入れコストが上がるとかなり厳しくなる。

飲食店はようは加工業者なので、自社で農場を持っているわけでもない一般レストランは素材が無くては商品を作ることができない。仕入れコストはまだお客さんに頭を下げて価格に転嫁することもできるかもしれないが、(これは実際に数週間前に起きたことだが)、
仕入先の貿易会社の倉庫が感染者発生のため閉鎖になったら、我々も閉鎖となってしまう。

通常時は特定の企業の休業・廃業などによって構築してきたサプライチェーンが崩れたとしても常に代替先はあるものだが、コロナ禍においては国内、海外どこを見ても広範囲にやられてしまいどうにもならないというのが今回の大きな問題か。


これを国単位で考えた時、食料自給率の問題を常に抱える日本は大丈夫だろうかと心配になってしまう。

ほんの少しずつだが、一旦コロナウイルスの影響で閉じていた周辺のデリなどの店が開き始めてきた。

感染のピークが見え、皆安心してきたのか?

いやいや、ただ単純に、

コロナ<経済的苦境

となっただけだと思う。

僕の情報源は、自社の店舗に料理をピックアップに来る日々何十人と触れ合う配達ドライバー、すなわち低所得者層との会話なのだが、

ドライバー「たとえ(噂になっている法案が通って)自宅の家賃の支払いが”猶予”されても、”免除”ではないのだから結局はいつか払わないといけない。今から働かなかったら将来破産だよ」

僕「(年収が$75,000以下限定だが)中、低所得者層へは大人1人あたり$1,200、さらに子供1人につき$500の現金給付があったでしょ?足りないの?」

ドライバー「家賃、食費、各種ローンの支払いなどでそんなの一ヶ月で無くなるよ。4月はなんとか払えたけど、5月1日はもう目の前、働かないとやばい。」

元々全く貯金が無いアメリカ人。今さら焦り出したか。

先日僕の店に夕食を買いに来てくれた日系スーパーのオーナーもおっしゃっていたが、エッセンシャルビジネスに該当しているのにも関わらず営業していない店舗の悩みの多くは、「店を開けて少しでも稼ぎたいが、従業員がいない」というもの。

僕の店はたまたま働けるスタッフがいたのでメニュー内容をデリバリー専用に変更、キッチンオペレーションをそちらに最適化し毎日開けられているが、それでも多くのバイトの方々が感染の恐怖から自ら仕事を休むことを選んでいて、結果、通常時は週に数時間しか現場に立っていなかった僕が、スタッフに怒鳴られ、時に土下座しながら慣れない作業をこなしている状態だ。

それでも上記の通り働きたい方はどこかに必ずいるのだから、(代替が効くポジション限定だが)新規雇用をしトレーニングを施せばしばらくすればある程度の戦力にはなってくれるのではと何度も採用を検討したが、なにせこの先が見えない世の中、新しい方を雇った後に正規スタッフが戻ってきたら、はい、クビです、とは心情的になかなかできない。甘いだけなのかもしれないが、それくらいならば自分でできる範囲でやるよ、となってしまうのが限られたスタッフと個人的な信頼関係も含め仕事をしている僕のような小規模事業者には多いと思う。

「雇用を継続・産み出せばその給与は保証する」

なんて謳っている政府の救済策も、前回の投稿で書いたように果たして全てのビジネスに行き渡るか分からないので、念頭に入れることさえアホらしい。

死者が20人にも満たないハワイ州でさえ5月末まで外出禁止令は延期となった。桁違いのNYが予定通り5月15日に解除となるとはなかなか現時点では信じ難い。短期・中期と計画を作っている経営者もこう日々めまぐるしく状況が変わると数日先の超短期計画さえ立てられない。計画に沿って日々の勉強を進めようにもどんなスキルも知識も全く役に立たなくなりそうで何をするべきか迷ってしまうくらいだ。(ちなみに僕は、長期計画は「長期計画」と呼ばず、「夢」というふざけた名前を付けているくらい、ほぼない。作ろうとも思わない。)

また、解除になったところで元の状態に戻るまで何ヶ月、いや何年かかるの?というのが誰もが持つ疑問だ。さっさと地方に逃げてしまった、都会に戻らずとも何年でも生活には問題がない富裕層や海外からの旅行者や移住者(これはトランプ政権によってさらにさらに絞られる)がいない限り、たとえ営業を開始しても、

「それはNYではない」

ので、うちも含め”NYであること”をベースに商売をしている多くのビジネスの状況はそれでは何も改善しない。

とは言っても、世界でNYの代替となるようなポテンシャルがある都市もほとんどが苦境であるし、国ベースではこういう時ほどやはり地力に勝る米国に資金が集まってくるだろうということは想像に難しくはない。また石油の価格がこれだけ低ければ、悪さ(笑)をする国も活動が多少緩やかになる(いや、逆に過激になることも時にあるか。。)だろうし、コロナ以前から続いていた米中関係がさらに寸断される=各社予測済みである以上、ある程度は各国冷静に元に戻る方向に進んで行くような気がする。

テロのような局地的なものと違い、ウイルスという可視化できず世界全ての人の心理に共通に影響を与えるという面が最後心配されるが、お金を使ってくれるみんな - 少し天気が良くなると禁止令などそっちのけですぐに外に出てワイワイ騒ぎ出す人達を見るに、うちのような単価が安いサービスは「短期的には」そこまでリスクがあるとは思えない。

それより、自社において最大の苦境となるのは実は今ではなく自粛解除から一年〜二年くらいかもしれない。経営者失格だが、残念ながらこの目まぐるしい変化に何をするべきか全く的確な案が思いつかなく、中期で予想されるリスクに対応できるかが大いに不安。

その自分の不甲斐なさに、よっぽどさっさとビジネスを閉じて日本に帰り山奥にこもって本でも読みながら数年くらい過ごすのが得策なのかもとも頭を過ぎったりしたことも正直一瞬だけあったが、僕は外国人ステータス(E-2ビザ経営者)なので、会社を畳んだ時点でビザは失効しこの国から出ないといけないし、一旦出たら共和党政権が続く限りは同じビザを取得しこの国に戻って来ることは二度とできないだろうから、やはり歯を食いしばってやれるところまでやろうと思う。まぁなんだかんだ言ってなんか毎日忙しすぎて楽しいし。

と書いていたら、政府の救済策の一つ、PPP Loan(中小企業向け給付金プログラムの第二弾)に関しChase Bankから電話がかかってきた。

「過去・現在に政府支給のローンを受けたことがありますか」とのこと。

だからないんだって3度くらい言ったけどね。

明日か明後日には結果が出そうである。

無数のアーティスト達と展示会を企画したり、多種様々なイベントを開催したり、僕を頼ってくださるクライアント企業のためビジネスプランを考えたり、、、そんな日々に一刻も早く戻りたいというのが本音だが、今はただひたすらに野菜を切り皿を洗いスクーターで走り回る日々。きっとそういうことをするべき時なんだろうと思う。

今のところ有り難いことに日々健康で過ごせている。僕にとってウイルスへの抵抗力を維持する最良の方法は通常時とできる限り同じペースを保つ、すなわち何も変わらず朝から深夜まで外に出て毎日働き続けることなのだろう。そうしたくても様々な事情でできない方も多い中、営業が可能な事業があり、多少でも稼げる手段があることに本当に感謝しないといけない。

もちろん他人に迷惑を掛けてはいけないので、
マスクも数日前の知事からの要請以降するようにしているし、またできる限りとはなってしまうがソーシャルディスタンスを守るのは当然なことだろう。

先週行ったコロナ最前線の病院への食提供プロジェクトは評判が良かったのか次回以降の依頼が来ており、昨日も150食を提供したばかり。他のレストラン経営者も主催者に紹介したので、参加可能なレストランは是非同プロジェクトを通して医療従事者をサポートしてもらいたい。実はこちらに注力するとうちのような小さな店舗は人手が足りなくなるので通常デリバリー営業をある程度縮小しなくてはいけなくなるが、それはしょうがないと思っている。

それにしても、このアメリカ人達が、皆珍しく(特によほど派手な行動をしない限り罰則もないのに)お上の言うことを聞き、自宅で
おとなしく待機していること自体が僕にとってのコロナ禍中の最大の謎だったのだが、最近になってやっとこさロックダウン反対派だのワクチン反対派だのがうじゃうじゃ出てきて、おお、これこれ、という感じ。そろそろ勝手な行動を、「権利だ」と主張し、したり顔で行う人達が出てきそうな気配がするのだが。

経済は短期的には思ったより悪くならなそうな雰囲気は見えてきた。
FRBによる無制限量的緩和や、幅広くジャンク債までも買われている様子に、これができるのはやはりアメリカだからだなぁと感心すらしてしまう。なにより今回は先進国が全てやられてしまっているので、たとえ米国の被害の深刻度が他国に比べ大きいとはいえ一人負けではないため、しっかりと海外の資金を集められれば大崩壊とはならないのかもしれない。

外出禁止令が出た当初、すぐに自社のレストランへのデリバリー注文数が何倍にもなり対応に大慌てになったが、この傾向は4週間経った今でも全く変わりはない。周囲のレストランが次々に閉鎖していく中、むしろさらに注文数は増えておりあまりに忙しすぎて体が付いていかないため、あえて時短営業をしたり、途中でデリバリーアプリを一時的に閉じ注文を取らないようにし休憩することもあるくらいだ。

このような僕の周囲の様子だけで推測するのはあまりにお粗末だが、
リーマンショックなどと違い今回は人々はお金を使いたくても使えなく、「お金の使い道」が主に家賃や食事などに限られているため、政府の救済策が「きちんと」機能し給料が一般の方々の保証されるならば、一旦自粛が解除された時に各所立ち直りは意外と早いのではとも思う。

と、そこでキーになる政府の救済策なのだが、残念ながらこれが問題続出となっている。
僕の周辺の中小企業経営者は皆頭が痛い状態。とても「きちんと」はいかなそうである。

Economic Disaster Loanと呼ばれる、全ての企業に当座の運転資金として
$10,000が数日で供給されるとされていた救済策は、発表後何週間経っても入金されずおかしいなぁと思っていたところ、予想以上の応募だったのだろうか、突然のアナウンスにより供給額が$1,000 x 従業員数($10,000を上限とする)と変更された。僕はというと本日入金を確認。こちらは返済不要の資金なので有り難く頂いておく。

もう一つの政府の救済策である
Paycheck Protection Program、通称PPPは結構なレベルで酷いことになっている。僕の周辺で同ローンを獲得したという話は一切聞こえてこず、分かっていることは応募が殺到し準備金額の上限金額に達したためあっという間に申し込みが締め切りとなったということくらいであった。僕は前職は銀行の融資部勤務であったので山積みになった申請書類の前で呆然としている銀行員の姿が目に浮かび、これは相当時間がかかるだろうなとは思っていたが、どうやら政府のアナウンスによると既に多くの企業がローンを獲得しているという。

おかしいなと思っていたところ、こんなニュースが流れてきた。
株式や社債の発行など資金調達手段をいくつも持つ多くの大企業が制度の抜け穴をかいくぐってローンの多くを獲得しているとのこと。

Shake Shack’s Repaid $10 Million PPP Loan Cannot Be Used To Make New Loans To Small Businesses

Shake Shackはその多くの企業の中の一社に過ぎない。


こんな状態では、資金待ちの間に倒産となる中小企業が多く出てきてもおかしくない。

僕も申請書類作成時に

「うちのような極小サイズの企業は審査を後回しにされそう」

なんて会計士に軽くつぶやいていたが、どうやらその通りになってしまったようだ。

銀行員の方は否定すると思うが、目の前に堆く積み上げられた膨大な申請書類を前にして、どの企業から処理していくかなんて分かりきったことである。従業員が多い、経済的に影響のある企業から先に審査をスタートし資金注入するべきであって、大半の小規模事業者なんて見向きもされないはずである。

こうして資金が枯渇したPPPだが、昨日追加支援(中小企業向けは31兆円)が決定。まだローンを獲得できるチャンスは残っているということか。ただ、僕はE-2ビザ保有の外国人経営者であり、この国では元々銀行ローンも組めないというハンデの中やってきたのでこのような救済が自分のところまで周ってくるなんて全く期待もしていない。もらえればラッキーくらいだと思っている。なにより、来るのかどうかも分からない他人の支援を待ち続けることで明確な目標が頭の中で描けないことほど経営者にとって辛いことはない。周囲の環境が日々変わっていくのがビジネスの常であって、うちもその度に過去何度も順応・変態してきたし、今回もその一つに過ぎないと思っている。

早朝から買い出しして、配達して、野菜切って、数分ごとに殺到するオーダーをこなし、時に盗人と喧嘩をし(詳細は近日中にこの場で書きます)、次の日の仕込みをして気づいたら深夜1時という日々が続く。

昨日のクオモNY州知事のアナウンス。5月15日まではこの外出制限の状態を続けるとのこと。

現在のデリバリーのみに制限された業務を365日間何年続けても僕は体力的には特に問題はないが、これは結構時間を食う作業なので、個人的なインプットやブログ執筆の時間を深夜の帰宅後就寝前の2-3時など一時間くらいしか確保できないのが悩み。

まず固定費を稼いでいかないといけないし、有り難いことにスタッフはやたらと元気なので店舗運営は続けていけるのだが、僕の個人的な我儘で多少時間を作りたくなったので、週に少しずつ半日休みを作って開店時間を減らしたり、デリバリー注文を取るオンラインサービス(Grubhub, Uber Eats, Postmatesなど)を特定の時間にいくつか選んで閉じたりして、多少だが椅子に座ってPCを触る時間を増やすことにした。

と、こうして作ったせっかくの時間なので勉強(かポケモンgo)に充てないといけないのだが、やはりコロナの現状がまず真っ先に気になってしまう。。

色々とざっと見ていて、これがまぁまとまっているか。

Science誌に掲載されているハーバード大学の公衆衛生学部、Chan Schoolによる4月14日付の論文。

Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period


これからの新型コロナウイルスSARS-CoV-2の対応策について、過去に人類が体験した類似のコロナウイルスから得られた知見を通じて簡潔に書かれている。

大半は既出の内容であり、確認になるだけなのだが、

・しっかりとソーシャルディスタンスを取って、感染者を可能な限り増やさないようにし(ゼロにするという意味ではない)

・限りある医療機関の人的・物的リソースを使い果たさないよう、重篤患者の数をコントロールし、

・少しずつ集団免疫を作っていく&ワクチンが出るまでの時間稼ぎをする

ということ。

免疫の話題だけでもSARS-CoV-2の免疫が維持される期間は二年?それ以下?類似コロナウイルスとのCross-immunityはあるの?などなど論点は多くありどの点も気になってしまうのだが、同論文も認めているようにまだまだ同ウイルスに関するデータは圧倒的に足りなく、すぐに議論は詰まってしまう。ただ、これを読んで感じるに、インフルエンザのように冬に感染者が増え夏に多少は減る(死滅するというわけではない)という傾向は(確定では全くないが)どうやら見えそうな雰囲気はあるので、数年間はもしかしたら冬に緩いロックダウンをして夏に解除したりというようなことを定期的に続けていくのかなという覚悟はした上で、(今日の)人生設計はしなくてはならないなぁという結論。

「ほらお前、今そんな途中経過を読んでもしょうがないだろ、時間の無駄」
「そんな暇があるならポケモン一匹でも多く捕まえろよ」

とか言われそうだが、まぁ気になったんだからしょうがないだろ。

ちなみに、これも皆さんにとって当然かもしれないが、、、血清検査は今後の対策を練るために重要な項目の一つとして書かれている。この点に関しては欧米、特にアメリカは感染者・重篤者が多い、かつ様々な人種が住んでいる国なので多種多様なデータが日々蓄えられていっているのではと思ってはいる。中国のチームも欧米に派遣されている?とのことだが、今やそれより米国内の研究機関の方がより正確なのではないだろうか。

また、僕だけでなく多くの日本人の関心事は、

「これは所詮、欧米のケースで、日本は違うだろ」

という点かと思うが、こちらに関しても同論文では地域要因に関してもまだはっきり分からないと書かれている。

「日本は欧米とは何かが違う」という中で、その何かがが一体何なのか、それは社会的な規範から来るものなのか、元々日本人がDNAとして持っているフィジカルのものなのか、ここら辺に関して書かれている論文が出てきたら(やはり日本の研究機関から出てくるのか?)すぐに読んでみたい。

まぁデータが少なくて困るくらい、感染者が少ないまま完全収束してくれると本当は良いのだが。。

2-3週間前から日本からのお客さんの荷物がなぜか店舗にどれも届かず。。

UPSやFedExは全く問題ないのだが、 自社East Village店向けのUSPS(郵便局)配達分だけがいくつか連続で届かず、スタッフに郵便局に行ってもらったり、僕自身も行ってきたのだが、30分ほど並んでカウンターまで行き着いても、「ここにあるはずなのだが、なぜかないですね、、、」と。。

といっても、僕の前に並んでいる人たちの中にも同様に見つからず郵便局員さんと揉めている方もいらっしゃったのでいつもより多少混乱はしているようだが、それでも7-8割の方は荷物を受け取っていたように見受けられる。

LIC店に送ってもらえると、こちらはビルに警備員がいるので確率はぐっと上がると思います。ここ一ヶ月内に「実は荷物送ったけど」、という方はご連絡ください。

ご迷惑をお掛けし申し訳ないです。

朝7時半、レストランの仕入れのため郊外にある大型市場に向かうが、道中全く人影が見当たらない。
外出禁止令下とはいえ、大概いつも数人くらいはフラフラしている人がいるものなのだが、おかしいな。。

市場に到着し8時の開場を待っていると、一台の車が僕に近づいてきた。

「あんた何してんの?今日はイースターだから市場はお休みよ」

しまった。すっかり忘れていた。。

コロナ禍中で日々あまりに街中に変化がない上、ただ毎日生き残るために目の前のビジネスに必死、なによりクリスチャンどころか人型の友人は指で数えるくらいしかいない僕がそんな皆の祝い事に気づくわけもなかった。いや、宗教的にこの国の多くの方にとってとても大事な日です。失礼を致しました。

常に買いそびれている業務用片栗粉はまたも次回にお預けとなったが、結果として予定より早く自社店舗に着けたため前倒しで開店、国民の休日とはいえやはり皆さん自宅隔離をしていらっしゃるのか今日も多くのデリバリーオーダーが入り大忙し。

イースターなだけに卵トッピングが多くなるんじゃないかと予想し急遽50セント値上げしてみたがやっぱりそんなことは全然なく、自分は相変わらずそこら辺のセンスはないなぁと思いつつも、今日も自慢のスクーター運転技術は冴え渡り、閑散とした街中をラーメン片手にアクセル全開、気づくと閉店時間の22時。いやー今日もヘトヘト。

実は連日の肉体労働で肩と腰が結構痛むのだが、そんな時は我が家に古くから伝わる仙豆、はるばるNYまで持ってきたアリナミンEXとキューピーコーワゴールドを数粒ずつ摂取すれば瞬く間に完治すると分かっているので、今日はもう少し無理をしてみようと思う。

ということでここからもう一仕事、結果次の日の朝10時までほぼ徹夜で突っ走ることになる。

Queens Borough President (Queens区の区長)が旗振り役となってスタートしたプロジェクト「Fuel The Frontlines」。

NYCの中でも最も感染者が多いQueens区の病院、まさに「Frontline = 最前線」で食事をゆっくり摂る時間さえない、コロナウイルスと日々戦い続ける医療従事者へ「Fuel = 燃料給油」、ようするに食糧を配給しようという企画である。

通常営業が禁止となりデリバリーとテイクアウトのみに限定され収益機会が限られる中、営業を続けている飲食店へのサポートという目的もあり、主にQueens区の飲食店が提供元となっているのだが、この度、僕の企業もその一社に選ばれることになった。

数日前に担当者から連絡が来て、急遽来週の月曜日に130人分の食事を用意してくれないか、とのこと。光栄なことなので喜んでと言いたいところだったが、実は下記の条件を全て満たすことができそうもなかったので一度はお断りをした。

1) 区が主導しているとはいえ同プロジェクトの財源は一般人・企業の寄付によるものであり、一食当たり$6-$8に抑えて欲しいとのこと。

2) グルテンフリーメニューであること。

3) 病院まで配達に行けること。

特に1)が問題で、ほとんどのバイトの方達がコロナ禍中で出社を控えている中、僕ともう一人のスタッフだけで130人分の食事を連日の12時間を超える通常営業後に作ることは体力的に無謀である。何より、一食最大でも$8では人件費や材料費を含め大人が満足できる内容のメニューを利益を出しながら提供できる店はほぼないのではないだろうか。本当は協力をしたくともただでさえ毎日ギリギリの状態で生き残るため必死に営業を続けている中、ボランティアをしている余裕など全くないというのが現状である。

だが、スタッフに上記の理由を告げ、

「断ったよ」

と伝えたところ、思いがけない一言が返ってきた。

「池澤さん本当はやりたいんでしょ。私がグルテンフリーメニュー考えるので、やりましょうよ」

9年前にこのQueens区で創業した時から「僕のような外国人が興したビジネスを受け入れてくれたこの街に根付くため可能な限りコミュニティに貢献していきたい」と常々語り、時に本業とは全く関係ないが街の植林を手伝いに行ったり、地元出身アーティストの展覧会を自社店舗で何度も開いたり、そしてその結果市から表彰されたこともある、、、そういう僕の経営理念を何千回も聞かされているこの最古参スタッフには、本当の想いを隠し通すことはできなかったようだ。

顔にすぐに考えが出てしまうのが僕のダメなところだが、それを汲み取ってくれたことに感謝し、またそこまで部下に言わせたならば、

「でも、、、」

なんて、もう上司として決して言ってはいけない。よしやろう、ということで主催者に即座に参加表明をし動き出すことに。

3)に関しては、僕らが担当することになった先がElmhurst, Far Rockawayという地域にあるコロナ患者達が日々搬入されている病院に隣接するEMS Stationで勤務している消防士や看護師向けの食事ということで、かなり自店舗とは距離があり困ったのだが、いくらコストがかかろうが構わないのでまずはUberで近くまで行き、(ただしUberの運転手を感染させては申し訳ないので)残りの数百メートルくらいは僕が荷車押しながら歩いて届けてやればいいやくらいに思っていたのだが、土壇場で運営側ががっちり感染予防した専門配達人を手配してくれることになった。やはりせっかくの作り立ての食事を僕がトロトロ人力で運んでいるうちに冷たくなったらいけないので、正直助かった。

その後、朝4時まで作業をし続け、20時間を超える連続労働でちょっと疲れが見えてきたので一度お互い自宅に戻り休憩を取ることに。僕は店舗に泊まっても別に構わないのだが、自分の中で毎日家に数分でも帰るよう近年は義務付けているので、大雨だがスクーターを飛ばして帰宅。そしてまた朝7時に店舗に再集合、10時15分、配達員の方が到着したちょうどギリギリに全て梱包まで完成、ご迷惑をお掛けすることなくお渡しすることができた。

皆さん、どうかそのおにぎりで元気になってウイルス達に打ち勝ってくれ、そう想いながら帰途につき、仙豆を飲み込み爆睡。創業時はこれくらいのこと屁でも無かったが、さすがにもう歳には勝てない。おめめがどうやっても開きません。

と、今日は勝手に臨時休業させてもらいました。言い訳は「イースター休暇」。クリスチャンでもないのに。

リピーターの方々、どうかお許しください。。



ちなみに同プロジェクトでは広く募金を集めているので興味がある方は是非。
参考までに、中間に入って運営してくれている方々はボランティアでやられていらっしゃるそうです。

Fuel The Frontlines
https://www.queensbp.org/fuel-the-frontlines/


今日は朝からManhattan地区にある自社第二店舗へ向かう。

いつもは大渋滞の各通りは全てガラガラなので、ど真ん中をスクーターのアクセルを全開にして走る。街のゴミもかなり減ったし、何度も過去の投稿でも言っているように空気が随分ときれいになった気がする。多くの店舗は閉鎖しており、出歩いている人もほとんどいない。唯一人がいるのがスーパー。各店、店舗内の人数調整のため入場制限をしており、店の前に長蛇の列が見られる。

よく「NYの治安は大丈夫?」と聞かれるのだが、現在の所、コロナ騒動以前と比べ僕の周囲では大きく変わったということはない。ただもちろんあまり良いとは言えなそうだが。


僕が経営するEast Village地区にある店舗では主にイベント・クラスを行っており常時オープンしているわけではないのだが、Queens店と同様に飲食店ライセンスを保有しているため外出禁止令中であってもデリバリー・テイクアウトを行うことは許可されている。しかし、数週間前にNYの感染者がどっと増え始めた頃に店舗の窓数カ所に大きくスプレーで落書きをされ、この地域では従業員の安全を確保することができないと判断し同店は閉鎖することにした。

僕が住むQueens地区でも最近は毎週のように様々な店舗・建物の壁などに落書きが増えていっており、実際に数日前にも僕とスタッフが通常営業を終え深夜2時くらいにスクーターに乗り帰っている時に高架下の柱にスプレーを吹き付けている若者二人組を見かけた。外出禁止令下、更に深夜帯に街中に人がいることはほぼありえないので彼らも突然現れ猛スピードで向かってくるスクーター二台に少し驚いている様子だったが、僕らもこんな周囲に誰もいないところで揉め事になりたくないので少し距離を取りながら横をただ通り過ぎていった。

直近でこんなことがあったので、監視カメラで異常がないことは一応日々確認はしてはいたがやはりManhattann店のことが気になり本日向かった次第である。結果、特に問題はなかったため安心したが、もうここ二週間ほど来ていなかったので、もしまた落書きやら投石やらされていたらと心配になっていたのである。

日本に住む方は「投石って?」と思われたかもしれないが、(高級住宅街を除いて)NYで店舗を経営している方ならば自社店舗が被害にあったことがあるかどうかは運だとしても、少なくとも数回は他店の窓ガラスが割られているのを見たことがあると思う。

うちのQueens店では数年前に、黒人の若者数人たちに突然石を投げつけられ窓にヒビが入ったことがあるし、隣の食器屋はクリスマスの休業日に入り口のドアが割られレジのお金が盗まれたことがある。Manhattan店の隣の古着屋でも一年前くらいだっただろうか、日中に何者かに窓を割られてしまい、店長が泣きそうな顔をして破片を掃除しているのを手伝ってあげたのを覚えている。

さらに、、、以下はもうNYでは当たり前過ぎて「治安」と呼ぶのかも既に分からないが、店舗前に人糞が落ちていてビルの住人と処理したこともあるし、小便に至っては毎月何回も目撃することなのでもはや驚きもしない。店舗に向かってしようとするので、チャックを下げたところで怒鳴りに出て無理やり行為を止めさせたこともある。物陰で女性がお尻をペロッと出して用を足しているのをスタッフと目撃してしまった時は流石に絶句であったが。この街には公衆トイレがほとんどないため酔っ払った若者たちが我慢できず街中でしてしまうのだ。興味のある方?はUrination(放尿)+New Yorkで検索をしてもらえればと思う。

誤解のないように言っておくが、これらのことは現在の異常な状態=外出禁止令下によって特別に起こっているというわけではなく、NYの通常の光景である。普段からこんな感じなので、僕みたいなものはちょっとそこら辺の感覚が麻痺していてあまり現在の治安について細かい変化に気づくこともなさそうである。ちなみに、僕が経営する二店舗はどちらも全く治安が悪い地域にあるわけでもないというのも伝えておきたい。East Village地区などは若者たちの遊び場であり、界隈はセレクトショップやお洒落なバーが乱立し週末は大賑わいだが、NYの若者は日本の若者と少し常識が違うのだろう。逆にこの話題の中で日本では見られここNYにはないものは、嘔吐くらいである。

今日ざっと周辺の店舗を見るに、窓は以前より割れている店舗も多かったし、落書きも増えていたが(二件隣のスタバの窓が悲惨。。)、通常より少しひどいくらいで、混乱ということは全くないと感じた。

さて、Manhattann店の無事を確認しほっとしたところでまた無人の街を突っ走りQueens店にまで戻ってきた。デリバリー営業開始。

今日のNYは少し寒かったな。ちょっとだけ雪っぽいものが降ったかと思う。

殆どの方は外出を自粛している状態のため、(コロナ以前の)通常営業時と異なり気候による食の配達件数の変動はほぼないのだが、僕はスクーターでフード配達をしているため天気が崩れると過酷度が増す。

実際のところ僕自身は大雨でも猛吹雪でもレインウエアーを羽織っている時間がもったいない(というかあまりに使っていなくてどこか行った)ので時にシャツ一枚で配達に飛び出ることもあるし、別にずぶ濡れになっても人間の体は温かいので15分もすれば乾くものだし、というか店舗に戻ってきても次の配達でどうせまた濡れるし、もっと言ってしまうと仕事終わって家帰ったら風呂に入ってまた大いに濡れるし、こうやって人間は濡れたり乾いたりを人生で何度も繰り返して生きているので大してその点は気にしないのだが、一番困るのはスクーターが壊れてしまうことである。

僕のスクーターは他の配達専業の方が使っていらっしゃるような$1000越えのものとは違い$400程度のものなので雨に弱い。特にバッテリー充電部分がやられてしまい過去に何度も買い換える羽目になっている。

今ではNYCの街中で誰もが当たり前のように乗る時代になったこの電気スクーター、僕は黎明期の4年前くらいからほぼ365日仕事で最低でも18-20マイル程度は日々乗っており、NYで、いや世界でも「電気スクーターの走行距離」でトップ10に入るのではと思っている。


アミーゴさん、中国人の方々が料理配達の際に乗っていらっしゃる電動自転車と違い、速度は多少遅いのだが代わりにデッキ(足場・立つところ)があるのでそこに荷物を載せることができ、毎日食だけでなく色々なものを街中運んでいる僕にとって必須、いやこれがなかったら僕の生産性は50%は落ちるので正直ビジネスが成り立たないと言っても過言ではない。


街中で警察官に「おーそれどこで買ったのか、かっこいいねー」と何度も話しかけられるくらいなのだが、実は意外なことに未だ公道での利用は正式には許可されてはいないとのこと。よって日本ではほとんど見られないこの電気スクーターについてヘビーユーザーの視点から話したいことは山程あるのだがグチャグチャ言う人が出てくるとめんどくさいのでこの場では今は書かないことにしておく。

個人的に相談には乗るので興味がある人はご連絡ください。

それにしても、ここ三週間くらい配達をしていて感じるのだが、家から出てくる人たちがどんどんやつれていっている気がする。今日も、薄暗い部屋の中からボサボサの髪の女性がヨロヨロと寝間着姿で出てきて、(まぁ飛沫感染したくない気持ちは分かるが)目も合わさず無言でお金を差し出しさっとラーメンを掴み取っていく姿を見ると、

普段だと、

「まぁ俺はこの国で男性としての魅力ゼロの虫けらだからそりゃそういう対応になるよね」

と思って納得できるのだが、今の状況下では、

「きっともう何週間も人と会っていなくて見た目とか気にしなくなっちゃったのかな」

「もう夕方なのに毎日やることなくて寝ているだけなのかな」

と思ってしまうよね。

一刻も早くこの状況が収束することを願うばかりである。

気のせいかもしれないが、最近街の空気がきれいに感じる。車や人が少ないからか?

いつも取引している食品卸業者と電話で話をしたが、彼らのクライアントである飲食店の多くはデリバリーとテイクアウトだけでは採算が成り立たずほとんど閉じてしまったとのこと。よって残っている店にオーダーが集中しているので、現場はどこも疲弊し始めている様子。

なんだかうちのスタッフは連日働いているにも関わらず元気いっぱいであり、一週間前にはとても処理しきれなかった大量オーダーも、細かな器具の配置、調理方法などを改善し続けることで相当スピードアップしてきた。人間、追い込まれると成長するものである。

僕も配達先でお客さんが家からノロノロ出てくる少しの間に補助金の申請手続きをしたり会計士に指示を出したり、店舗では常にカウンターにPCを置きフード配達員の方と話しながらも指だけはキーボードを叩き続けていて(ポケモンは基本は自動捕獲器に任せる)、まだまだ無限に生産性を上げることはできると思ってはいるが、とは言っても、あと何週間、何ヶ月もこの状態を続けるのはどうみても無理があるので、過去2-3週間のデータを見ながらオーダーが落ち着く時間帯などは閉館することに。

もうこの騒動が始まってからのお客さんで10日くらい連続でうちで注文してくれる(しかも毎日同じメニュー・・・・)方などもいてリピーター率が非常に高くなってきた中、彼らの期待になんとか応えてはいきたいのだが、僕らが倒れてはいけないので少しだけ余裕を作ることに。

また別の問題として、材料調達先である卸業者も様々な理由でビジネスを縮小→材料の配達頻度を減らせざるを得ないという中、僕らのようなレストラン側は材料の仕入先の確保が難しくなってきており、
継続したくても、ものがない、という状態になってきた。

材料自体が枯渇しているとかそういうことではなく、流通経路がウイルスの影響でやられてしまっているということ。

この点、普段からしっかり代替案を考えて策を用意しておいた店舗さんは問題がないのかもしれないが、僕は経営が甘かったと認めざるを得ない。

仕入先の食品卸業者さんの倉庫で感染者が出てしまい、本日のみ除菌のため閉鎖とのこと。
また別の仕入先でも同様に感染者が出てこちらの方は残念ながらお亡くなりになられたとのこと。

ひとまず卸さんからの材料の配達がないと営業が続けらないため、本日はやむなく臨時休業し、代替品を調達しに街中スクーターで走り回ることになった。結果、同じ肉が無いけど似たものは手に入ったのでキッチンスタッフと急ぎ試作品を作ることに。

どこも大変。

僕が自社で手掛けている展示会、クラス、コンサル、フード事業の中で唯一継続することが許可されているものが、レストランのデリバリーとテイクアウト。

普段キッチン・サーバーをしてくださっているバイトの方達の多くは感染の危険があるため出社は控えたいということで、僕と残された 1-2名のスタッフのみで毎日開店しているのだが、3月23日の外出禁止令以来オーダー数は毎日増え続け、ここ最近は通常時の7-10倍の量の注文数となっていてキッチンはパンク状態。

何が辛いって、Uber Eatsなど料理宅配サービスから派遣されてくる配達員さん達の「早くしろ」コール。いや、怒号とでも呼ぼうか。注文が殺到する時間帯には常に数人の目が血走った方々が僕を取り囲み、「まだかまだか」の大合唱。この空間には「6フィート」なんてルールは間違いなく存在しない。彼らは完全歩合制なので、限られた時間に一件でも多くの配達をこなしたい。僕もなんとかその期待に応えてあげたいのだが、この見たこともないような量の注文の山に対し結構お待たせしてしまうこともしばしば。

ここ二週間日々フロントで何十人という無数の配達員と会い続けているため多くの方と顔見知りになり、たまにお互い忙しい中短い会話をするのだが、昨日こんな方がいた。

ランチ時間を過ぎ15時くらいだろうか、少しだけ波が落ち着いた頃に店舗に入ってきたUber Eatsのドライバー。

配達員「連日忙しい?」

僕「(見れば分かるだろ笑)めちゃくちゃ忙しいね」

配達員「なんでビジネス続けているの?どうせサードパーティ(Uber Eatsなど宅配サービス)にコミッションたくさん取られて全く儲からないでしょ。君のビジネスは政府の補助金でサポートしてもらえるでしょ。他のレストランはどんどん閉めて行ってるよ。」

僕「僕は外国人ステータスなので補助金をもらえるか100%定かではないから働き続けないと潰れてしまうよ。でも何よりいつも以上に「こんな時に営業してくれてありがとう」と多くの人に言ってもらえることがたまらないしね。君はなぜ?」

配達員「僕も生活のことももちろんだけど、この仕事を通して社会に貢献できていることが楽しくてやっているんだ」

話を聞くと、彼は元々エンジニアとして正社員として働いていたが2週間前に解雇されてしまい、家族を養うために急ぎ宅配サービスに登録したとのこと。

「この仕事、やりがいあるよね」

お互いゆっくり話す暇など全くない中、最後そう言って出来たばかりのご飯を掴んで車に乗り込んで行った。

こんなことを言ってはなんだが、レストラン事業はうちの主力ではない。同事業開始以来5年間、毎年売上・利益共に上がっていってはいるが、企業のポートフォリオとしてはどちらかというとコンサルやアート事業をサポートする役割であり、食専業でやられているいわゆるレストランさんとは違う形で地域社会に彩りを与え根付いていくことを目的に続けている。なのでミシュラン星を目指すとかそういうことではなく、同目的に合致する程よいバランスを取ることが大事だ。ただ現在のような「Essentialではない=必要不可欠ではない」ビジネスの継続が許されない状況下、同事業が無かったらもはやどうみても倒産まっしぐらだったため、たとえ主力ではなかっとしてもまだ一ドルでも稼げる手段が残されていたことに対し、助かった(今でも相当厳しいが)というのが本音だ。社会貢献など考えている暇は正直ない。たまたま結果的にそうなっているようで感謝されている、それだけである。

僕はこの地でビジネスを始め9年になるが米国社会についてまだ数ミリくらいしか理解できていないので、現地人の求めているサービスをCustomer-drivenで考え提供できているかというと残念ながら自己採点でも100点満点中30点くらいだろう。

なので、このように自分が何も考えず目の前の生き残りのためだけに半分?自己満になって必死に日々続けていることが、どこかで「自分が意図していなかった」付加価値を生み出しているというのは嬉しいというか、意外であるとでも言おうか。

ただ、マズローのどの段階にいるか次第ではあるのだが、少なくとも僕は他人に認められることで生きていると感じているので、いや、むしろそれしか今生きている意味を感じられないので、

「いつまで生きているか分からないけど」

とよく言うし、本当にそうなんだけど、こうして少しでも何か社会のためになれることができているというのは間違いなく明日へのモチベーションに繋がる。

最後に。

「自宅待機しないとあなたのせいでウイルスが広がり、いつまでも収束しないだろ。自分のことしか考えていない」

そういう意見もあるだろう。理解はできる。

本当は外に出て思いっきり動き回りたいのに社会のためにならないから頑張って自宅に居続けないといけない、それは本当にストレスの溜まることだというのも容易に想像が付く。とても辛いと思う。こんな事態をすぐに終わらすためウイルスをうつし、うつされないように、できれば全ての人が家で待機できたらいいのかもしれない。

そして、なんだかんだ言って、僕も含め、大半の配達員の方々も自分が生き残ることだけを考え感染なんてことは無視して必死に働いているだけなのかもしれない。

でも、外はあまりに危険でスーパーに買い出しにも行きたくない、料理する具材さえもないという人も多い中、この方達が感染リスクを背負って運んできてくれている。そこは分かってもらえると嬉しい。

こういう時なのでなおさら、皆でバランスを取りながら社会をキープしていきましょう。

今日も発症していないことに感謝。

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