ここ最近自社レストランの仕入れのためほぼ毎日行くようになったNY市内にある業者用食品市場だが、ソーシャルディスタンスを守るということで入場制限が課せられている。
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午前6時のオープン時に行くとこんな感じ。45分待ち。太極拳をしているおじさんやスマホでセクシー画像を見ているお兄さんなど思い思いに待ち時間を過ごしている。ちなみに先週昼14時に行ったときは2時間待ちだった。

PCやスマホがあれば待つことには正直何の苦もないとはいえ、行く度にこんなに待たされたらその後の予定もなかなか立てられず困るなぁ。。

この入場規制は一度に市場内に滞在する人数を減らし可能な限り感染リスクを減らしたいということなのだと思うが、列に並んでいる時点で6フィートの距離を空けている人など誰もいない。なにより日々不特定多数の方々と触れ合う飲食関係者の陽性である確率は非常に高いものだと推測できる。といって検査で陽性なんて出た日には店を閉じないといけない→目の前の$1を稼がないと経済死が待っている僕らがそんなことできるはずもない(いや、しなきゃダメだけど、でも、という話)。

ちなみに外出禁止の発令当時は一般消費者が行く街中のスーパーでは小麦や卵が品切れになっていたし値段も高騰していたが、業者が集まるこのような市場ではその傾向は特に際立って見られず、現在においても全ての食材において十分な量が確保されている。ただそんな状況など一瞬で吹っ飛ぶものなので決して安心はできない。なぜならこれら大規模市場や農場など生産地が何らかの理由で閉鎖となる可能性も大いにあるからだ。

以下のEaterの記事(4月14日付け)によると、工場で働く労働者や商品を街まで運ぶ配送業者がコロナ禍により少なくなっているため、せっかく作った肉や卵、牛乳など生鮮食品を廃棄しているという。

There May Be More Coronavirus Food Shorages Around the Corner 

また、以下Washington Postの記事(4月25日付け)では、食肉加工大手であるTyson Foods, JBS USA and Smithfield Foodsを始めとする31箇所の工場(添付地図参照)で感染者が出ており、既に15箇所の工場を閉鎖しているとのこと。各社従業員に適切なcovid-19への対応策を提供していなかったとして非難の的となっており、相応の努力はしているようだが従業員の立ち位置、生産ラインの変更など一朝一夕にできるわけがなく、再開の目処は立っていない。

As they rushed to maintain U.S. meat supply, big processors saw plants become covid-19 hot spots, worker illnesses spike


結果、既に米国の牛肉、豚肉生産量の25%が減少している様子で、そろそろ店頭価格へ影響が出るものと思われる。

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以下CNNの記事(4月26日付け)だが、Tyson Foods会長の「The food supply chain is breaking(フードサプライチェーンは崩壊しつつある)」というコメント、なかなか刺激的である。

'The food supply chain is breaking' Tyson says as plants close


このような状況を踏まえ、食肉加工工場の運営を継続するよう二日前に大統領令が出されたが、従業員だけでなく世間を納得させるだけの対応策が取られていないのが現状のようである。


Trump orders meat processing plants remain open

僕の店でも最近以前よりさらにビーガンメニューのリクエストが多くなってきたので、いっそ高くても植物性代替肉にシフトする手もあるかもとも思ったが(まだ全然美味しくない)、今回のコロナ禍中ではこの特定の分野だけでなくほぼ全ての業界に影響が出ているためうちのような小規模事業者では手が打ちようがない。

参考:メーカーの代表格であるBeyond Meatの株価はぐっと先週上がっている(といってもコロナ禍以前にはまだ戻っていないが)

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デリバリーとテイクアウトだけでなんとか事業を継続している中、ただでさえ料理配達アプリに15-30%も手数料を持っていかれているというのに、これ以上仕入れコストが上がるとかなり厳しくなる。

飲食店はようは加工業者なので、自社で農場を持っているわけでもない一般レストランは素材が無くては商品を作ることができない。仕入れコストはまだお客さんに頭を下げて価格に転嫁することもできるかもしれないが、(これは実際に数週間前に起きたことだが)、
仕入先の貿易会社の倉庫が感染者発生のため閉鎖になったら、我々も閉鎖となってしまう。

通常時は特定の企業の休業・廃業などによって構築してきたサプライチェーンが崩れたとしても常に代替先はあるものだが、コロナ禍においては国内、海外どこを見ても広範囲にやられてしまいどうにもならないというのが今回の大きな問題か。


これを国単位で考えた時、食料自給率の問題を常に抱える日本は大丈夫だろうかと心配になってしまう。